個人的にめちゃくちゃ好きな本。小さな風景を収集し、分類することで、それは知恵に昇華し、未来のクリエイティブの種となると思う。
概略 amazonより
東日本大震災(2011年)以降、建築家の役割や建築空間の価値の基準が揺らぎ始めている中、若手建築家、乾久美子氏も震災復興事業において精力的な活動を見せる一方、人びとに求められる「ゆたかな空間」のヒントを探り続けていた。そんな中、被災地で見たある光景をきっかけに、日常の中にある「ささやかな風景」が、空間づくりをする上でのヒントになるのではないか、と強く考えるようになった。 本書は建築家・乾久美子氏の「作品集」ではなく、乾氏が教え子である学生たちと半年かけて行った国内の公共空間にある「ささやかな風景」をリサーチし、まとめたものである。これまでも建築家があらゆる場所のリサーチを行い、類型化し、キーワードを使って分析するノウハウ本は多く見られるが、本書の特徴は、結論を明確に示さず、読者ひとりひとりの「気づき」に委ねているところにある。2,000枚に及ぶ写真を通して多くの人が「日常空間のゆたかさ」に共感し、その価値を共有できることが訴求ポイントとなっている。 難しい理論では語れない、空間の質を考える上でのヒント集となるだけでなく、このような乾氏の葛藤しながらもより良い建築を考え抜こうとする姿が、建築を学ぶ学生だけでなく、実務者にとっても勇気を与え、共感されていくものと考える。
乾久美子_Kumiko Inui プロフィール
1969年大阪府生まれ。1992年東京藝術大学美術学部建築科卒業。1996年イエール大学大学院建築学部修了。1996〜2000年青木淳建築計画事務所勤務を経て、2000年乾久美子建築設計事務所を設立。2011年東京藝術大学美術学部建築科准教授就任。主な建築作品に、「Dior Ginza」(2004)、「アパートメントI」(2007)、「フラワーショップH」(2009)、「KYOAI COMMONS」(2011)など。現在は東北で小・中学校の計画や、宮崎県延岡市におけるまちづくりが進行中
目次
まえがき|風景のポートレイト
調査方法
a-並び方
1 一糸乱れぬ並び
2 取り囲む
3 コピー&ペースト
4 等間隔
5 やまびこ
6 整列する
7 まちのギャラリー
8 向かい合わせ
9 縁取る
10 壁に寄り添う
b-スケール
11 まわりの大きさと少し違う
12 平べったい
13 やせている
14 路上の懐
15 気持ち大きめ
(中略)
u-おおらか
136 水に近い
137 ゆったり使用中
138 眺めがいい
139 がらんどう
140 スコンと抜けて
141 包まれた空間
142 軽やかな構造
143 あけっぴろげ
v-日常
144 空間をつくっている途中
145 無防備な洗濯物
146 みちでの生け花
147 まちの必需品
148 パブリックライブラリー
149 自分の手の内でできること
150 日常の中の物語
※数字はユニット名、アルファベットは似ているユニットをまとめたグループ名
考察|このリサーチを通して見えきたもの、気づいたこと
あとがき
参考文献
協力者一覧・クレジット・略歴
2014年4月17日 初版第1刷発行
2015年3月30日 初版第2刷発行
編著者=乾久美子+東京藝術大学美子研究室
発行者=加藤徹
編集協力=株式会社鴎来堂
装丁・本文デザイン=飯田将平+深川優
印刷・製本=株式会社サンエムカラー
発行所=TOTO出版(TOTO株式会社)