まがったキュウリ―鈴木俊隆の生涯と禅の教え/デイヴィッド・チャドウィック
禅は海を超えてアメリカでZENとなった。その立役者の1人、鈴木俊隆の生き方とその軌跡
1960年代のアメリカに坐禅をもたらし、スティーブ・ジョブズをはじめカウンター・カルチャー以降の世代に大きな影響を与え、世界を代表する精神的指導者となった鈴木俊隆の、生い立ちから渡米、アメリカでの活躍と弟子となった若者たちとの生活、広まりゆく禅の様子、そして遷化までを時系的に綴った唯一の評伝。
著者のDavid Chadwickは、鈴木俊隆の直弟子であり、自らの経験とともに、多くの関係者に取材をして日本時代からアメリカ時代まで、詳細な記録と証言をもとに鈴木俊隆の生涯を見事に浮かび上がらせた。
アメリカの禅の歴史を物語るだけでなく、ビートニクやカウンター・カルチャーの生きた記録であり、現代のシリコンバレーの文化につながる精神史の土台を伝える貴重な一冊。
本書は、Crooked Cucumber: The Life and Zen Teaching of Shunryu Suzuki by David Chadwickの完訳です。
目次・著者プロフィール
目次 :
1_日本編_1904‐1959
幼年時代1904‐1916
師匠と弟子1916‐1923
進学1924‐1930
大本山僧堂1930‐1932
住職1932‐1939
戦時中1940‐1945
占領下1945‐1952
家族と死1952‐1956
序幕1956‐1959
2_アメリカ編_1959‐1971
新たな出発1959
礼拝1960
僧伽1961‐1962
旅1963‐1964
定着1965‐1966
タサハラ1967‐1968
市内1968‐1969
一と多1969‐1970
運転手1971
最後の季節、秋1971
【著者紹介】
デイヴィッド・チャドウィック : 1966年、二一歳のときに鈴木俊隆について修行を始め、1971年鈴木師によって得度した。現在は妻と息子とともにカリフォルニア州ソノマ・カウンティーに住んでいる
浅岡定義 : 1924年、静岡県生まれ。旧制・静岡高等学校在学中、友人数名と共に鈴木俊隆の教えを受ける。学徒出陣で中国に行く。東北大学卒業後、商社勤務。インド(ボンベイ、ニューデリー)、マニラに駐在する。ボンベイ(現ムンバイ)駐在の際、ブータン王国への日本使節団に同行する。2016年、九一歳にて逝去
藤田一照 : 1954年、愛媛県生まれ。東京大学大学院博士課程(発達心理学)を中退し、二九歳で得度。渡米後、マサチューセッツ州パイオニア・ヴァレー禅堂で坐禅を指導。2005年に帰国し現在も、坐禅の研究・指導に当たっている。曹洞宗国際センター第二代所長。著書・共著・訳書など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
マインドフルネスを辿ると、鈴木俊隆さんにいきついた
僕は2022年末にうつ病にかかった。詳しい記事はこちらに。その時に、マインドフルネスが一つの治療方法としてよいと医者の弟に言われ、調べ始めた。そのルーツは禅にあり、仏教にあった。アメリカで日本から流入した座禅や、ベトナムやインドから入っていった仏教の瞑想が、アメリカの大学で医療的研究がなされて、マインドフルネス瞑想へと発展を遂げる。日本の禅的な空っぽになる座禅と、呼吸と現在に集中し瞑想を行うマインドフルネス瞑想とは、また少し方法論が違うが、ルーツは同じだ。
鈴木俊隆さんは、日本の禅宗である曹洞宗のお寺を営みながら、あるきっかけでアメリカで禅を広める活動にシフトする。日本人による仏教や禅に求めるものは修行というよりも、葬式仏教の中での先祖供養的な意味合いが最も強い。しかし、アメリカでは先祖供養としての需要よりも、瞑想・禅というマインド、心の作用として自分にどう働くか?それで幸せになれるのか?ストレスを減らせるのか?不安はなくなるのか?というような、プレーンに座禅、座ることというのをはじめる。入り口が全く違うのだ。俊隆さんは、一つ一つ英語で紐解きながら、ルーツなどと合わせて訪れた人に指導していく。そして、ビートニクやカウンター・カルチャー、シリコンバレーの経営者が導入することによって、一部の誤解も含めて、それは世界中に浸透していく。日本でも禅としての座禅よりも、マインドフルネスとしてアメリカから逆輸入されたものが広まったり、また別の呼吸法としてはヨガとして動作と合わせて入ったりもしている。
曹洞宗、臨済宗の禅僧は昔っから座禅をしているのに、その様式ではなく、輸入されたものが使われていることが多い。不思議だ。日本らしいといえば日本らしいが。
そして、日本においては、葬式的仏教と、修行的仏教の二階建て(松本紹圭)と表現されている。日本人は曹洞宗や臨済宗のお寺のお坊さんは、総本山・修行道場などで座禅を組みある一定期間修行し、資格を得る。その後は自分のお寺に帰りほぼ家業の葬式仏教が中心となる(生計を立てるために)。なので、座禅などを一般に公開しながら、一緒に修行的仏教をやりましょうというお坊さんは少ない。少し増えてきているように思うけれど。
対して上座部仏教の国では、お坊さんは稼がなくてもよく、基本的には寄付や托鉢で暮らしている。一般の人も入りたい時に仏道にはったりというシステムもある。日本はあまりにも信仰としての仏教と、商売としての葬式仏教がかけ離れているのが問題だという声も多い。ま、いろんな歴史があって、こうなったのだけれども。
ま、いいとしてグーッと話を戻すと、鈴木俊隆さんの生き方は、とても面白い。波乱万丈、紆余曲折あるが、その時その時で、状況を受け入れ、一つ一つ判断していっているのがよく伝わる。仏教や禅というきっかけでなくとも、戦前から戦後を生き抜き、アメリカで軸を貫いた人の人生をぜひなぞってみてほしい。
本
まがったキュウリ―鈴木俊隆の生涯と禅の教え/デイヴィッド・チャドウィック
新訳-禅マインド-ビギナーズ・マインド/鈴木俊隆:スティーブ・ジョブスも愛読したと言われる伝説の書。この本が全世界で読まれ禅とマインドフルネスが広まった。
鈴木大拙さんの本:合わせて、同じ鈴木だが別人で、禅を広めた鈴木大拙さんの著作もぜひ目を通してもらえると。ちと難しいけど。僕もよくわからないところは多い。
藤田一照さんの本:そして禅や座禅についての概念的なところは、禅マインド・ビギナーズ・マインドを翻訳した藤田一照さんの著書がおすすめ。仏教の概念について、座禅の概念について、理論と実践を行き来する方で素晴らしい。