【読書】錯視は広告表現にも使える_マグリット400

ルネ・マグリットはベルギー出身のシュルレアリスムの画家である。錯視を利用した不思議な感覚になる絵が特徴的だと言えるだろう。絵画のタイトルがとても面白い。理解できるものも、できないものもあるが、その絵のタイトルは、単純な名前ではなくて「コンセプト」を表しているようにも感じる。コルコンダ人の子世界大戦などが僕は結構好きなのだが、その名前の意味深さと、何かを暗示するような作風が「?」の連続をつくり、永遠に絵を見続けられる要因なのだろうと思う。

錯視、マグリットの表現には、日常と非日常が同居していて、その違和感に気づいた人も、気づかない人も妙に惹かれる。そして、その違和感に人は惹きつけられる。コンコルダは「雨」という日常を連想させながら、でもその雨の代わりになっているのは「男」であり、雨という憂鬱さや、冷たい感じなどと、男という固有情報とを連結させ、独特のなんとも言えない不思議さを感じさせ、さらに雨を連想させるにもかかわらず、外は晴れれている。雨という冷たさや憂鬱さを連想しながら、でも外は晴れているという矛盾。全体として矛盾しているから、違和感を覚え、その訳を無意識的に考え続けたら、絵から離れることができなくなる。言い換えると、ずっと見続けることができる。さらに、そのカラクリなどに気づいてくると、人に伝えたくなっていく。これも広告や広報的な手法に近いのではないか?

広告や広報を組む時も、言葉や画像で何かしらの違和感を仕組む必要がある。一瞬「?」となるなかにも、伝えたいことと、売り込むサービスを要素として入れておく必要がある。マグリット広告という本も出ていて興味深い。

amazon:マグリット400_ジュリー・ワセージュ

動画

紹介

「私の絵に、説明できうる謎など何ひとつない」
壮年期の葛藤、混迷からの発見、挑戦そして深化……
マグリットが“イメージの魔術師”となるまでの全軌跡を
400点という膨大な点数で綴る画期的作品集。

20世紀ベルギーを代表するアーティストとして称えられる、
シュルレアリスムの巨匠ルネ・マグリット。
日本では初掲載となる作品を多数含む、
現実・常識・概念を解き放つ厳選の作品をオールカラーで紹介します。

悪童として名を馳せた幼少期、母の自殺、初恋である妻・ジョルジェットとの出会い、未来派とキュビズムに明け暮れた学生時代、シュルレアリズムの結実、印象派や野獣派を求めた知られざる不遇の時代、規則正しく描き続け自らの作風の深化に向き合った最晩年……。

誰のものでもあり得るような平凡な人生を送った画家は、誰のものともつかない特徴のないスタイルで描きながらも、我々を魅了してやまない強烈な個性を放つ作品を生涯で多く残しました。言葉、観念、イメージと向き合い続けたマグリットの作家人生をかけた試みを、厳選400点という前代未聞の規模でたどります。

著者は、マグリット美術館に在籍した経歴をもち、ルネ・マグリットを専門としてプロジェクトを複数担当する新進気鋭のキュレーター・美術史家です。掲載作品は、研究者の視点で生涯作約1,700点のなかから丹念にセレクトされ、マグリットの故郷ベルギーの版元とのコラボレーションにより本書が実現しました。かつてみたことのない壮大な規模で作家人生を追う、美術ファン必見の一冊です。

【目次】
1919-1925年 抽象画、シュルレアリストになるまでの試み
1926-1930年 暗黒時代
1927-1930年 言葉とイメージ
1931-1942年 選択的親和性
1943-1947年 陽光のシュルレアリスム
1948年「牝牛(ヴァッシュ)」の時代
1947-1967年 日常の中の詩

著書プロフィールと本

ジュリー・ワセージュ  (ジュリーワセージュ)  (著/文):美術史家、キュレーター。ブリュッセル自由大学で美術史を専攻し、2012年に卒業。2013~16年、コラボレーターとしてブリュッセルのマグリット美術館に在籍。ルネ・マグリットに関する複数のプロジェクトを担当する独立した研究者として貢献している。

マグリット400_ジュリー・ワセージュ

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