【動画】V Tuberビジネスはどうなっていくのか?カバー株式会社代表:谷郷元昭

感想

YouTuberも、芸能人やプロも多く参入してきて、かなり玉石混合となってきた。上場企業のUUUMも苦戦する中で、V Tuberはカバー株式会社ANYCOLOR株式会社の2強として今後が注目される。個人的にYouTuberは顔出しするのが、かなりハードルが高いような気がしていて、V Tuberはアバターで活動できるので、自分が好きな人格ではあるが、現実世界とは別人格で活動できる点が最大のメリットなように思う。Adoなど顔出しNGでも紅白に出場したりライブを行ったりと、時代は変わってきている。この業界に注目していきたい。このページはpivotチャンネルのカラー代表谷郷さんのインタビューを元にまとめた。

プロフィール:谷郷元昭 カバー株式会社代表取締役

谷郷元昭カバー社長 慶應義塾大学理工学部を卒業後、イマジニア株式会社株式会社サンリオと提携したゲームのプロデュースを担当後、テレビ局や出版社と提携した携帯公式サイトを運営する事業を統括。化粧品口コミサイト@cosme運営の株式会社アイスタイルでのEC事業立ち上げ、モバイル広告企業、株式会社インタースパイア(現ユナイテッド)の創業に参画後、株式会社サンゼロミニッツを創業し、日本初のGPS対応スマートフォンアプリ「30min.」を主軸としたO2O事業を展開し、株式会社イードへ売却。2016年6月13日にカバーを設立。twitter(YAGOO)のフォロワーは海外も含め70万人を超える。

【VTuberビジネス、爆速成長の秘密】VTuberとは何か? なぜ人気なのか?/アニメ市場が倍増/海外でもファンが急拡大/ライバルは韓国/YouTubeの重要性/利益率が高い理由(前編)

カバー株式会社は、ANYCOLOR株式会社と合わせてV Tuberビジネスを牽引している2社。

V Tuberとは何か?

(谷郷)V Tuberとはアニメルックなアバターを使いながら活動しているエンターテイナー(配信者だったり、クリエイターだったり)
(佐々木)では、背後に人がいるってことですよね?声とかは本人の人の声なんですか?
(谷郷)基本的にそうですね。個人的な活動をしている人の中にはボイスチェンジャーを使われている方もいるかもしれませんが、企業所属のV Tuberの場合は基本自分の声で活動していると思います。

動画内要約

なぜ、こんなにV Tuberが人気なのか?

(佐々木)なんで、こんなV Tuberが人気になっているんですか?
(谷郷)まずは、アニメの市場がこの10年ですごく大きくなった。10年前は1.3兆円ほどでしたが、今では(2023年12月)2.7兆円くらいのマーケットになっています。また、コロナの影響などでamazonプライムやnetflixなどのプラットフォームを通じて、アニメーションを見られることになったということが大きいです。アニメの市場がニッチなおたくな市場ではなくて、メインの市場に近づいていると。そういった中で、アニメルックなアバターを活用して活動しているような、アニメキャラクターが生きているような体験を提供しているV Tuberが人気になったのかなと思います。

(佐々木)2016年創業じゃないですか。谷郷さんは、このV Tuberがいついけると思ったのですか?
(谷郷)我々はもともとVRのゲームをつくる会社として起業しているのですが、このVRゲームをどうやってお客さんに伝えていこうか?という中で、自社で3DCGのキャラクターを使って、実況するようなシステムを開発していましたが、これが、V Tuberを活用するシステムの根幹になった。

(佐々木)なるほど。私みたいな人間からすると、有名なキャラクター(例えばドラえもんみたいな)が喋ってると受けるような気がするのですが、なんで有名じゃないアバターが喋っているものに惹かれるのですか?
(谷郷)結局は接触頻度ですね。youTuberとV Tuberの大きな違いとしては、V Tuberも初期はyou Tuberと同じ動画を投稿するタイプの活動のスタイルだったのですが、今のV Tuberの活動のスタイルとしてはライブ配信ということで、毎日、あるいは週3回といったようにライブ配信を行い、お客さんとチャット欄を通じて双方向にやり取りすることができるところですね。それで、それぞれのV Tuberさんに目標があったりして、お客さんは、それを一緒に応援したりとか、コメント欄を通じた、他の視聴者とのやりとり、他のV Tuberとのやりとりを楽しむ。そういう双方向のやりとりが面白いという側面だったり、あとは接触頻度ですよね。
ドラえもんは週1回だったり少ない。でも、V Tuberは週3回だったり、毎日だったり、我々ホロライブプロダクションとしては、毎日誰かが放送している状況ですので、じゃあホロライブというコンテンツに接触する頻度がものすごく高くなっていく。そういうところが人気の側面なんじゃないかなと思います。

動画内要約

V Tuberの3つの活動軸とその内容


(佐々木)では、ファンの人たちも1人の人を応援するわけじゃなく、他の人も応援しているわけですか?
(谷郷)そうですね。V Tuberのメインの活動はゲームの実況カラオケの配信雑談。この3つくらいが主軸です。実は、ゲームや歌というのが実は国境を越えられるというところが大きなポイントであると思います。例えば初音ミクさんは歌で国境を越えられた。世界的に流行っているゲームも一緒なので、そうすると、あの人がこのゲームが上手いか?とか、昔懐かしいゲームをやっててノスタルジーを感じるとかは世界中の人にとって同じようなことだったりする訳ですよね。加えて重要なのは、最近は複数人でするゲーム、例えばFPS(ファースト・パーソン・シューティングゲーム)のゲームなどは、他のV Tuberさんと一緒にゲームをして、それを中継して掛け合いのようなものを体験する。アニメなども、例えばドラえもんも、のび太とか脇役のキャラクターがいることによってドラえもんというコンテンツが成り立っていること同じように、ホロライブというものも、アクアとか、そういうタレントみんなの掛け合いによって、1つのコンテンツとして成り立っている。

(佐々木)面白いですね。雑談ってどんな雑談してるんですか?
(谷郷)例えば自分が美術が好きでとか、美術館についてだとか、最近見てるものハマっているものみたいな。そういうテーマで雑談することが多いのかなと思います。
(佐々木)海外でも結構広がってきてますよね?
(谷郷)そうですね、我々でも視聴者層の30%が海外の方ですね。ライブ配信で翻訳はむずかしいが、コメント欄でファンの方が翻訳してくれたり、ライブ配信は長いけれど、終わってからファンの方が切り抜きで翻訳をつけてアップしてくれたりしています。(英語のものを日本語字幕にしたり、日本語のものを英語字幕つけたり)KPOPなどは、そういうファンが自主的に翻訳するみたいな文化ができてるが、V Tuberも同じような文化ができています。

動画内要約

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V Tuberの発掘と育成

(佐々木)どうやって新しいIPをつくっていくのか?どうやって発掘・育成を行うのか?
(谷郷)日常的にオーディションを行い、グローバルで採用している。重要なのは「スキル」があること。V Tuberは見た目にとらわれずに、その人自身のスキルで戦うことができる。そういうビジネスだと思っている。だからこそ、本当のスキルが問われる。例えば歌が上手いとか、例えばレトロゲームならこのV Tuberがすごいだったりとか、最新のFPSのゲームはこの方が上手いとか、その人ならではの吐出した特徴が必要です。加えてモチベーションですね。ライブ配信者として週3回、毎日とやるのは並大抵のことではありません。youtubeでライブ配信やるだけでしょ?と思われるかもしれませんが、サムネイルつくって、今日は何放送するか?とか予定と企画を組み立てながら何ヶ月も配信を続けていくには、本人が何かを成し遂げたい目標があって、モチベーションがある人じゃないと続けられないですよね。

(佐々木)厳しいコメントもあるわけですもんね。
(谷郷)そうですね。我々としても誹謗中傷というのはチェックしていて、モデレーターが日々24時間ライブ配信を監視しているのですが、誹謗中傷を潰していくようには会社として努力しているのですが、それでも心無い意見を言う方はいらっしゃっるとは思いますし、それでも本人がやりたいと思えるかどうかがすごく重要だと思います。

(佐々木)オーディションの時に、配信者は生身の人間として出るのか、Vtuber像としてでるのですか?
(谷郷)声ですね。顔は出さすに声だけでオーディションします。
(佐々木)では、その人がどのようなビジュアルを添えるかはカバーの方と一緒に考えるのですか?
(谷郷)これはケースバイケースで、元々キャラクターが決まってることもあれば、一緒に決める場合もあります。
(佐々木)V Tuberというものの出現によってルッキズムから解放されたんですね?
(谷郷)そうですね、adoさんみたいに、顔出しせずに活動されている方も元々いらっしゃいますが、V Tuberというものも、そういう活動の解放みたいな面も個人的にはあると思っていて、若い方にとっては可能性を感じてもらっている部分もあるのかなと思います。

動画内要約

V Tuberのマネジメント

(佐々木)芸能界のようにまず発掘して、その後丁寧に育て、デビューさせ、プロデュースしてというマネジメントのプロセスはアイドルと同じですか?
(谷郷)違う点があるとしたら、基本的にインフルエンサーなので、本人の活動がメイン。本人が何をやりたいのか?というところが重要です。それに下支えする形でタレントマネージャーだったり会社のスタッフがサポートしていきます。ただ、ユニットやグループとして展開する場合は会社が主導していくことで新しいお客様を惹きつけていくということがあります。このように、個人個人の活動はインフルエンサーとして行っていただき、一方でユニットやグループは今までのアイドルグループさんのようなマネジメントに近いのかなと。この二つの要素が重なっている感じかなと。
(佐々木)より個としての裁量が大きいということですね。エージェントとかと似てるかもしれませんね。そういう意味では、事務所としての側面と、メディアとしての側面を両方持ってることが垂直投合になっていて、それが高収益の源泉ですよね。

動画内要約

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)

ミッション

つくろう。
世界が愛するカルチャーを。

個性の光るクリエイターが集まり、その表現⼒を発揮できる舞台を。
先端技術を注ぎ、クオリティにこだわり抜いた新体験を。
国境を超え、世代さえも超えて、
愛される⼆次元エンターテインメントをつくる。
ただ、そのために、私たちは挑戦をつづけます。

バリュー

果敢に、しかける。
チームで、背負う。
ともに、歩む。

事業展開

01_VTuber Production:https://cover-corp.com/business/vtuber
02_Media Mix:https://cover-corp.com/business/mediamix
03_メタバース:https://cover-corp.com/business/metaverse

決算等業績:2024年2月時点:決算説明資料より

youtube総ch登録数が8,625万人、V Tuberの数は86人、1人あたりの在籍V Tuberの年間収益3.12億。売上と営業利益、純利益は添付の通りである。

売上の中でも、マーチャンダイジング、配信/コンテンツ、ライセンス、ライブ/イベントの順で売上が大きいことがわかる。

ファン層は、国内も海外も伸びていることがわかる。

V Tuberあたり収益の状況。V Tuber一人当たりの稼ぐ付加価値が伸びていることがわかる。

ライブは結構変動しているな。

売上総利益(粗利)は大体45%前後で推移しているようだ。金額は全体的に伸び傾向。

販売管理費、25-30%前後で推移。

営業利益、営業利益率。営業利益率の長期目標水準を30%と高い位置に置きながら、17%前後で近いところは推移。

中期戦略。強いIPの開発とファンベースはある程度でき、ここからコマース展開にファンの体験価値向上、ファンコミュニティ拡大に向けた開発、設備投資の拡充を行い、メタバースの展開という流れのよう。

TAMといいうのは、(total addressable market, total available market, TAM)獲得可能な最大市場規模、総獲得可能市場、アドレス可能な市場全体のことを言う。配信ストリーミングマーケットだけでなく、国内アニメ市場、グローバルアニメ・動画市場、ゲーム関連市場まで含めると、21.9兆円と大きなマーケットになる。ここまでマーケットを考えているということ。

社内の人材の配置。結構いろんな領域を持ってるんだなーという印象。

従業員推移

KPIにyoutubeのチャンネル登録者数を置いていることがわかる。

終わり。この記事は2024年2月前半に記述。内容はどんどん変わっていくと思いますので、coverのwebサイトをごらんください。

https://cover-corp.com

上場時インタビューはこちら(2023年03月27日)

決算説明資料の書き起こしはログミーファイナンスにもあるので参考までに。

関連書籍:中山淳雄さんの本がおすすめ

著者情報:中山淳雄(wiki)

エンタメ社会学者。事業家(エンタメ専業の経営コンサルRe entertainment創業 https://www.reentertainment.online/)と研究者(早稲田博士・慶應・立命館大研究員)、記者(Gamebiz記者)、政策アドバイザー(経産省コンテンツIPプロジェクト主査)を兼任しながら、コンテンツの海外展開をライフワークとする。東京大学社会学修士、カナダMcGill大学MBA修士。以前はリクルート・DeNA・デロイトを経て、バンダイナムコスタジオ・ブシロードで、カナダ・シンガポールでメディアミックスIPプロジェクトを推進&アニメ・ゲーム・スポーツの海外展開を担当。 前歴:リクルートスタッフィング、DeNA、デロイト、バンダイナムコスタジオ、ブシロードなどで10年以上北米、アジア向けにアニメ・ゲーム・スポーツの海外展開を担当してきた。

エンタメビジネス全史-「IP先進国ニッポン」の誕生と構造/中山淳雄おもしろすぎるゼロイチ挑戦の物語――。任天堂、ポケモン、DeNA、手塚治虫、BL、コミケ、ジャンプ、コロコロ、正力松太郎、ディズニー、東アニ、エヴァンゲリオン、ジブリ、鬼滅、ソニー、ナベプロ、ジャニーズ、宝塚、松竹、吉本、力道山、グレイシー、東映、角川、巨人、新日本プロレス……

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鳥嶋和彦(『ドラゴンボール』『ドラクエ』の元・少年ジャンプ編集長)
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